意識高いバックパッカーになってみよう!1~バックパッカーとは?~
意識高い学生に人気のバックパッカーとは、一体なんなのか。その真相に迫るーーーー
「あ、やっぱ行きたくない」
バックパッカーとは
なんだと
・・・本物の感覚?
「でも海外じゃなくても成長できるんじゃないの?それに行ってからどうこうしたいって目的も特にないし、やっぱやめようかなあ」
「留年生くん…」
俺、見つけに行きます!
― 意識高いメモー
若者の行動に目的はいらない。行動そのものに意味がある。
意識高い学生への目覚め
留年した僕は数日後、M先輩に飲みに誘われた。
「やっぱり!」
「いっぱい!」
「う、うらやましい…」
「起業!」
「ゼロイチ!!!!!」
「かっこいい…」
「俺…いや私、意識高くなります」
「たしかに湯水のごとくわいてくる」
「そして何からやったらいいかわからん。やっぱやめようかな」
K太郎「ねえ…」
彼は一緒に飲んでいたK太郎くん。就活うまくいってない同期の代表です。
K太郎「俺もバックパックやってみたいから、一緒に行かない?
・・・!!
序章
7月10日―
立ち込める雲と淫靡な街の灯りが、星の輝きを覆い隠そうとする夜だった。
僕は大学のサイトにアクセスしようとキーボードを叩いている。
早鐘を打つ鼓動は指先まで震わせて、パスワードを何度も間違えさせる。
――僕は就活生だ。
しかしただの就活生ではない。
46単位取得という重荷を背負って険しい山を登る
就活界のアルピニスト。
取得できる単位の上限は年間で48。
僕はあと4単位、つまり2つの講義を落とせば、後期を待たずに留年。
深いクレバスに飲み込まれることになる。
そして今日
初めて出た2時間目の講義で、今まで出席を取っていたことを知った。
5時間目の講義では、先週中間試験が行われたと、金髪の受講生達が話しているのを聞いた。
目を、耳を疑った。
単位取得の条件は合計で60%以上点をとること。
もし出席や中間試験の点数配分が大きければ…終わりだ。
そう、僕は今シラバスを確認するためにPCに向かっている。
何度もパスワードを間違えた後、
ようやくサイトが開く 。
ものの1,2分の作業が、終わらない拷問のように感じられた。
すぐさまメニューをクリックし、講義一覧のページへ、各講義のページへと画面を進めていく。
まずは2時間目だ。
そして
シラバス
一つ息を吸い込んで、クリックする
成績評価の方法が書いてあるところまで
画面をスクロールする
ー出席40%、試験60%ー
肺の中の空気が、体中の血液が、一瞬で全て水銀に入れ替えられてしまったみたいだった。
期末試験で満点をとれるはずなど、ない。一度も出席した事のない男がだ。
冷たくなった指先で、冷たいデータを映す機械に指示を出す。
もうひとつの講義も確かめなければならない。
正直、確かめたくない。そこに書いてあるのは、死刑宣告かもしれないのだ。
しかし逆にだ。5時間目のシラバスを開いた時、もしかしたら中間テストなど無いことがわかるかもしれない。さっきの会話は聞き間違いで、中間テストなどなかったかもしれないのだ。
もはや根拠のない励ましにすがるしかなかった。
かぼそい可能性の杖に、弱りきった体を預けてなんとか進む。
そんな姿を自分でも滑稽だと思った。
そして5時間目のシラバスが表示される
画面をスクロールしていく。
お願いだ
今からちゃんと勉強します
なんでもします、神様
どうか
ー成績評価の方法ー
―中間試験30%ー
瞬間、体に熱が戻る 。
中間テストはあった。
しかし、期末が70%なら決して不可能ではない。
俺ならできるさ。やってやる――
もう一度画面を見直す。
―中間試験30%ー
―期末試験50%ー
―出席20%ー
・・・・・
その時僕は、自分の足元が崩れる音を、確かに聞いた。
僕の就活は終わった。
もはや星は見えない。
行き先を教えてくれるものは、なにもない。